2008年 11月 18日
イリジウムの失敗に学ぶ |
マーケティングの授業が非常に面白い。MBAで勉強するマーケティングは掴みどころのないふわふわしたものかと思っていたがそんなことは全くない。教授はケロッグでも授業を教えているため、毎週フランスとシカゴを往復している。あり得ない体力である。
マーケティングの授業は興味深いケースをたくさん取り扱っているが、その中でも面白かったのがイリジウム。多くの皆さんがご記憶のことだろう。今からちょうど10年前に、衛星通信を使った携帯電話として発売されるものの、わずか2年程度で市場から撤退してしまった製品である。授業中にその当時のテレビコマーシャルを見たが、1998年当時の記憶が蘇ってきた。日本の企業も数社イリジウムに投資をしており、知名度としては非常に高い製品だったと思う。世界のどこにいても電話が繋がるなんてすごい、なんと画期的な製品だと思ったのを覚えている。しかし、値段は非常に高く、日本国内にしかいない僕にとっては意味のないものであった。発売から数年後に「そういえばイリジウムってどうなったんだっけ?!」という話を友人としたのを覚えているが、INSEADのマーケティングのケースで取り上げられているとはびっくり。
イリジウムのケースを読むと、失敗の王道を行く製品で、MBAが好む典型のような事例である。モトローラの当時の責任者でさえ、「イリジウムは将来のMBAの授業の格好の対象となる」と皮肉的に述べている。
イリジウムがなぜ失敗したのかを考えると、無数の理由が上がってくる。値段が高い、携帯電話が大きすぎる、使うために特別のトレーニングを受ける必要がある、マーケティングプランが予定通り実行されなかった等。しかし、一番の理由は、次の点に集約されるのではないだろうか。技術が先走ってしまい、その技術を必要とする顧客を考えなかったということである。当時としては、技術的には最先端であることは誰もが認めるところであり、エンジニアの視点から見れば、夢のような製品であったことは間違いない。膨大な投資の後イリジウムが完成するのだが、投資の回収のためには、支払い能力の高い顧客セグメントを選ぶ必要があった。結局その対象として、世界各地を出張する”International Business Person”がターゲットとされる。当時の予測は販売開始後に50万人が購入し、その後も順調に増えていくという試算であった。実際はその50分の1の1万人が購入するに留まったのである。世界各地を出張するビジネスマンが、巨大な携帯電話を持ち歩くというのは確かに考えにくい。イリジウムの失敗は起こるべくして起こったと言える。イリジウムのケースを読んで、個人的にびっくりしたのが、顧客セグメントをInternational Business Personとしていた点である。なぜならば、当時のコマーシャルを見ると、雪山の中で遭難しかけている人が救助要請をするシーン、砂漠を移動するバックパッカーが友人に電話をかけるシーンなどが主であり、明らかに顧客ターゲットとの乖離があるのだ。イリジウムに対する僕のイメージもこのCMから発生しているので、イリジウムはもともとビジネスマンを対象にしていた というケースを読んで、「????」と思ったのである。
技術を開発してから、それに見合う顧客セグメントを恣意的に見出そうとすると失敗する可能性が高くなるということを教えてくれるケースであった。
マーケティングの授業は興味深いケースをたくさん取り扱っているが、その中でも面白かったのがイリジウム。多くの皆さんがご記憶のことだろう。今からちょうど10年前に、衛星通信を使った携帯電話として発売されるものの、わずか2年程度で市場から撤退してしまった製品である。授業中にその当時のテレビコマーシャルを見たが、1998年当時の記憶が蘇ってきた。日本の企業も数社イリジウムに投資をしており、知名度としては非常に高い製品だったと思う。世界のどこにいても電話が繋がるなんてすごい、なんと画期的な製品だと思ったのを覚えている。しかし、値段は非常に高く、日本国内にしかいない僕にとっては意味のないものであった。発売から数年後に「そういえばイリジウムってどうなったんだっけ?!」という話を友人としたのを覚えているが、INSEADのマーケティングのケースで取り上げられているとはびっくり。
イリジウムのケースを読むと、失敗の王道を行く製品で、MBAが好む典型のような事例である。モトローラの当時の責任者でさえ、「イリジウムは将来のMBAの授業の格好の対象となる」と皮肉的に述べている。
イリジウムがなぜ失敗したのかを考えると、無数の理由が上がってくる。値段が高い、携帯電話が大きすぎる、使うために特別のトレーニングを受ける必要がある、マーケティングプランが予定通り実行されなかった等。しかし、一番の理由は、次の点に集約されるのではないだろうか。技術が先走ってしまい、その技術を必要とする顧客を考えなかったということである。当時としては、技術的には最先端であることは誰もが認めるところであり、エンジニアの視点から見れば、夢のような製品であったことは間違いない。膨大な投資の後イリジウムが完成するのだが、投資の回収のためには、支払い能力の高い顧客セグメントを選ぶ必要があった。結局その対象として、世界各地を出張する”International Business Person”がターゲットとされる。当時の予測は販売開始後に50万人が購入し、その後も順調に増えていくという試算であった。実際はその50分の1の1万人が購入するに留まったのである。世界各地を出張するビジネスマンが、巨大な携帯電話を持ち歩くというのは確かに考えにくい。イリジウムの失敗は起こるべくして起こったと言える。イリジウムのケースを読んで、個人的にびっくりしたのが、顧客セグメントをInternational Business Personとしていた点である。なぜならば、当時のコマーシャルを見ると、雪山の中で遭難しかけている人が救助要請をするシーン、砂漠を移動するバックパッカーが友人に電話をかけるシーンなどが主であり、明らかに顧客ターゲットとの乖離があるのだ。イリジウムに対する僕のイメージもこのCMから発生しているので、イリジウムはもともとビジネスマンを対象にしていた というケースを読んで、「????」と思ったのである。
技術を開発してから、それに見合う顧客セグメントを恣意的に見出そうとすると失敗する可能性が高くなるということを教えてくれるケースであった。
by Insead_2009
| 2008-11-18 10:00