2009年 07月 21日
運転資金の管理について |
現在発売中の日本語版Harvard Business Reviewに僕が履修していたファイナンスの教授(ケビンカイザー教授)の投稿が掲載されているが、4月に一足先に英語版を授業の補助教材として読んでいた。なるほどと思う点がいくつかあったので、簡単にご紹介。
一言で表現するならば、運転資金の取り扱いが企業価値に大きな影響を与えるというもの。特に現在のような不況期にはそれがさらに重要であると述べている。*ここでは便宜的に企業価値は将来キャッシュフローを現在価値に割り引いて算出されるものとする。
この論文の要点の一つに、Account Receivableの取り扱いがある。ARの増加は運転資本の増加を示し、キャッシュのアウトフローを意味する。例えば、ある営業員が商品Aを顧客に売ったとする。この不況期でなかなか現金の回収ができず、1年後にキャッシュが回収できたとする。売上として計上されるのは1000万円であるが、果たして本当に”1000万円”として考えて良いのであろうか。答えは否である。現在価値に割り戻せば、これは1000万円の価値はないことになる。つまり実際は、この営業員は、現金の回収が1年後になったことで、実質的に顧客に対して値引きをしているのと同じことになるのである。
企業価値がフリーキャッシュフローで規定されるという前提で議論すると、1年後に1000万円を回収するよりは、3か月後に980万円を回収したほうが、実は現在価値的には高い可能性がある。顧客の現金回収が遅れている場合、もともとの金額を長期間待って回収するより、値引きを与えて額面としては少ない金額を回収したほうが、実は合理的な活動であるという結論になる。
営業員の成績を”売上”で評価することは非常に多い。営業員の生産性評価をするというプロジェクトに幾つか携わったことがあるが、僕の記憶に間違いがなければ、営業員の成績指標の中に、どれだけ短期でキャッシュを回収したかという項目が入っている企業はなかったように思う。カイザー教授が、本論文の中で、「営業員に売上向上のインセンティブのみを付与することは不十分である。なぜなら、ARの増加→Cash の減少→企業価値の低下につながる可能性があるからだ」との記載があるが、理論的には真っ当な発言であるが、実際の現場では、それほど実践されていないのではと思う。売上成績が芳しくない場合、少なくとも現金の回収の速さでは負けない!というのも、一つの戦略なのかも?と思った。
一言で表現するならば、運転資金の取り扱いが企業価値に大きな影響を与えるというもの。特に現在のような不況期にはそれがさらに重要であると述べている。*ここでは便宜的に企業価値は将来キャッシュフローを現在価値に割り引いて算出されるものとする。
この論文の要点の一つに、Account Receivableの取り扱いがある。ARの増加は運転資本の増加を示し、キャッシュのアウトフローを意味する。例えば、ある営業員が商品Aを顧客に売ったとする。この不況期でなかなか現金の回収ができず、1年後にキャッシュが回収できたとする。売上として計上されるのは1000万円であるが、果たして本当に”1000万円”として考えて良いのであろうか。答えは否である。現在価値に割り戻せば、これは1000万円の価値はないことになる。つまり実際は、この営業員は、現金の回収が1年後になったことで、実質的に顧客に対して値引きをしているのと同じことになるのである。
企業価値がフリーキャッシュフローで規定されるという前提で議論すると、1年後に1000万円を回収するよりは、3か月後に980万円を回収したほうが、実は現在価値的には高い可能性がある。顧客の現金回収が遅れている場合、もともとの金額を長期間待って回収するより、値引きを与えて額面としては少ない金額を回収したほうが、実は合理的な活動であるという結論になる。
営業員の成績を”売上”で評価することは非常に多い。営業員の生産性評価をするというプロジェクトに幾つか携わったことがあるが、僕の記憶に間違いがなければ、営業員の成績指標の中に、どれだけ短期でキャッシュを回収したかという項目が入っている企業はなかったように思う。カイザー教授が、本論文の中で、「営業員に売上向上のインセンティブのみを付与することは不十分である。なぜなら、ARの増加→Cash の減少→企業価値の低下につながる可能性があるからだ」との記載があるが、理論的には真っ当な発言であるが、実際の現場では、それほど実践されていないのではと思う。売上成績が芳しくない場合、少なくとも現金の回収の速さでは負けない!というのも、一つの戦略なのかも?と思った。
by Insead_2009
| 2009-07-21 21:07