2009年 01月 04日
「お笑い芸人」のモテをブルーオーシャンストラテジーで分析してみた |
INSEADの戦略教授チャン・キムが数年前に提唱した企業戦略のコンセプトで、ブルーオーシャンストラテジーは世界各国で翻訳され、世界的な大ベストセラーとなっています。2004年ぐらいに同書を日本語版で読みました。その当時はINSEADに来るとは思ってもいませんでした。
P2の戦略の授業で、数回にわたってブルーオーシャンストラテジーの講義があり、任天堂のウィー、シルクドソレイユ、IKEAなどをケースに説明していました。ビジネスの強力な理論的支柱になるということで、いくつかの企業がアニュアルレポートなどで、ブルーオーシャンストラテジーを取ると明言し始めているようです。INSEADに来たからにはブルーオーシャンストラテジーの授業を取らなくてはと思い、P4でも履修予定です。
簡単にブルーオーシャンストラテジーの僕の理解するところを説明したいと思います。ブルーオーシャンの反対はレッドオーシャンと定義されています。レッド→赤→血、つまりレッドオーシャンとは、血みどろの競争のあるビジネス環境を示し、ブルーオーシャンとは、そのような競争のない環境を示します。企業は常にブルーオーシャンを見つけるべきであると。
抽象的な説明はつまらないので、ケースで説明します。ビジネスケースではありません。卑近な例ですが、「なぜお笑い芸人が持てるようになったのか」ということテーマに、ブルーオーシャンストラテジーを説明したいと思います。(我ながら下らないなあと思いつつも、思い切って書いてみました。)
80年代後半から90年代前半にかけて、持てる男性の属性として、「3高」セグメントがありました。高身長、高学歴、高収入。これらの項目をX軸に置きます。Y軸はそれぞれの程度を示します。分析の便宜上、Y軸の数値が高ければ高いほどその男性は持てるということにします。実際身長がジャイアント馬場みたいに大きすぎると、持てないとは思いますが。
以下3人の男性を分析の対象とします。
A君:身長170cm、某有名私立大学卒業、年収800万万円
B君:身長180cm、某有名米国大学博士課程卒業、年収1億
C君:身長175cm、某有名国立大学修士課程卒業、年収1000万円
上記3人の情報をY軸上にプロットし、それらの点を結んでカーブを描くとB君のカーブが一番上に位置し、C君、A君の順番になります。ブルーオーシャンストラテジーでは、このカーブをバリューカーブと呼んでおり、3人のバリューカーブのポジション(上下の位置)は異なりますが、カーブの形を見るとほとんど同じです。つまり、この市場で勝ち抜くにはバリューカーブをひたすら上に持っていくような血みどろの努力が必要になります。収入を上げるために仕事を頑張る、勉強していい学校に行ってさらには博士になってやろうなどです。でもこの競争には限りがありません。全員が博士になったらどうしましょう。全員が年収1億になったらどうしましょう。さらに上を目指す、まさにレッドオーシャンが待っているのです。彼らはへとへとになってしまうでしょう。
90年代半ば以降にバリューカーブの形を全く変える新しい人種が登場しました。それが、「お笑い芸人」です。彼らは、「3高」とはまったく異なるバリューカーブの形を持っています。平均的に見れば身長は対して高くないでしょう、学歴も高くないでしょう、有名でなければ収入も高くないかもしれません。でも、話が面白い、話題が豊富、など「3高」の人が持っていない要素を持っています。先ほどのX軸に、話が面白い、話題が豊富などの項目を入れて、同様にバリューカーブを描いてみましょう。明らかに「3高」の人とは異なるバリューカーブとなります。異なるバリューカーブの創出。これこそがブルーオーシャンストラテジーなのです。「お笑い芸人」が一時期非常に持てた(もしくはお笑い芸人が持てると言われていた)ことは、ブルーオーシャンストラテジーからも説明がつきます。
と、ここだけ説明を終える予定だったのですが、このブログを書いているうちに、さらに新しい点に気づきました。ブルーオーシャンストラテジーでは、ブルーオーシャンは、やがてレッドオーシャンになると説明しています。
近年の「お笑い芸人」を見てみましょう。身長の高いお笑い芸人、学歴の高いお笑い芸人、収入もよいお笑い芸人が沢山います。まさに、ブルーオーシャンが、レッドーオーシャンになっているのです。つまり、彼らのバリューカーブは、話が面白い、話題が豊富という点のみならず、従来の「3高」が持っていたバリューカーブも兼ねるようになったのです。こうなると、「3高」も、その直後に出てきたただの「お笑い芸人」も相手になりません。
新しいブルーオーシャンはどこなんでしょうか。と思っていたら、最近は、家事ができる、育児ができる、主夫ができる、癒しを与えるなどが出ているようです。これもバリューカーブの観点からみますと、完全に異なる形を提示します。
持てる(利益を上げる)ためには、男性(企業)は、他の男性(競合他社)とは、異なるバリューカーブを提示し、女性(顧客)獲得をするのが、進むべき道(企業戦略)となります。 僕の理解が正しければ、以上がブルーオーシャンストラテジーです。
追伸
授業で扱ったケースでは、任天堂のウィーが非常に理解しやすいかと。従来のコンピューターゲームは、対象が子供、少人数で遊ぶ、ボタンを押すだけ、遊び方が複雑、などがバリューカーブであったが、ウィーは、対象は子供も大人もOK、大人数でも盛り上がれる、実際に動く、単純など、バリューカーブの形は全く異なる。異なるバリューカーブを提供するビジネス・製品が必ずしも成功するとは限らないが、企業が新しいビジネスを考える上で進むべき一つの方向であるのは間違いなさそうである。 余談であるが、ウィーのケースを扱っていたときに、今や懐かしいファミリートレーナーについて質問をしてみた。ほとんどの学生はファミリートレーナーの存在を知らなかったが、まったく異なるバリューカーブを提示するコンピューターゲームだったのになぜ成功しなかったのだろうということを質問してみた。あまり納得のいく回答を得られなかったのであるが、市場が熟しておらず、デマンドがなかったからとのこと。異なるバリューカーブを提供しても、そこに顧客の需要がないといけないわけで、あまりにエキセントリックになってしまうと、誰にも相手にされなくなってしまうということなのでしょう。
以下で教授が説明をしております。
http://www.randomhouse-kodansha.co.jp/blueocean/top.html
P2の戦略の授業で、数回にわたってブルーオーシャンストラテジーの講義があり、任天堂のウィー、シルクドソレイユ、IKEAなどをケースに説明していました。ビジネスの強力な理論的支柱になるということで、いくつかの企業がアニュアルレポートなどで、ブルーオーシャンストラテジーを取ると明言し始めているようです。INSEADに来たからにはブルーオーシャンストラテジーの授業を取らなくてはと思い、P4でも履修予定です。
簡単にブルーオーシャンストラテジーの僕の理解するところを説明したいと思います。ブルーオーシャンの反対はレッドオーシャンと定義されています。レッド→赤→血、つまりレッドオーシャンとは、血みどろの競争のあるビジネス環境を示し、ブルーオーシャンとは、そのような競争のない環境を示します。企業は常にブルーオーシャンを見つけるべきであると。
抽象的な説明はつまらないので、ケースで説明します。ビジネスケースではありません。卑近な例ですが、「なぜお笑い芸人が持てるようになったのか」ということテーマに、ブルーオーシャンストラテジーを説明したいと思います。(我ながら下らないなあと思いつつも、思い切って書いてみました。)
80年代後半から90年代前半にかけて、持てる男性の属性として、「3高」セグメントがありました。高身長、高学歴、高収入。これらの項目をX軸に置きます。Y軸はそれぞれの程度を示します。分析の便宜上、Y軸の数値が高ければ高いほどその男性は持てるということにします。実際身長がジャイアント馬場みたいに大きすぎると、持てないとは思いますが。
以下3人の男性を分析の対象とします。
A君:身長170cm、某有名私立大学卒業、年収800万万円
B君:身長180cm、某有名米国大学博士課程卒業、年収1億
C君:身長175cm、某有名国立大学修士課程卒業、年収1000万円
上記3人の情報をY軸上にプロットし、それらの点を結んでカーブを描くとB君のカーブが一番上に位置し、C君、A君の順番になります。ブルーオーシャンストラテジーでは、このカーブをバリューカーブと呼んでおり、3人のバリューカーブのポジション(上下の位置)は異なりますが、カーブの形を見るとほとんど同じです。つまり、この市場で勝ち抜くにはバリューカーブをひたすら上に持っていくような血みどろの努力が必要になります。収入を上げるために仕事を頑張る、勉強していい学校に行ってさらには博士になってやろうなどです。でもこの競争には限りがありません。全員が博士になったらどうしましょう。全員が年収1億になったらどうしましょう。さらに上を目指す、まさにレッドオーシャンが待っているのです。彼らはへとへとになってしまうでしょう。
90年代半ば以降にバリューカーブの形を全く変える新しい人種が登場しました。それが、「お笑い芸人」です。彼らは、「3高」とはまったく異なるバリューカーブの形を持っています。平均的に見れば身長は対して高くないでしょう、学歴も高くないでしょう、有名でなければ収入も高くないかもしれません。でも、話が面白い、話題が豊富、など「3高」の人が持っていない要素を持っています。先ほどのX軸に、話が面白い、話題が豊富などの項目を入れて、同様にバリューカーブを描いてみましょう。明らかに「3高」の人とは異なるバリューカーブとなります。異なるバリューカーブの創出。これこそがブルーオーシャンストラテジーなのです。「お笑い芸人」が一時期非常に持てた(もしくはお笑い芸人が持てると言われていた)ことは、ブルーオーシャンストラテジーからも説明がつきます。
と、ここだけ説明を終える予定だったのですが、このブログを書いているうちに、さらに新しい点に気づきました。ブルーオーシャンストラテジーでは、ブルーオーシャンは、やがてレッドオーシャンになると説明しています。
近年の「お笑い芸人」を見てみましょう。身長の高いお笑い芸人、学歴の高いお笑い芸人、収入もよいお笑い芸人が沢山います。まさに、ブルーオーシャンが、レッドーオーシャンになっているのです。つまり、彼らのバリューカーブは、話が面白い、話題が豊富という点のみならず、従来の「3高」が持っていたバリューカーブも兼ねるようになったのです。こうなると、「3高」も、その直後に出てきたただの「お笑い芸人」も相手になりません。
新しいブルーオーシャンはどこなんでしょうか。と思っていたら、最近は、家事ができる、育児ができる、主夫ができる、癒しを与えるなどが出ているようです。これもバリューカーブの観点からみますと、完全に異なる形を提示します。
持てる(利益を上げる)ためには、男性(企業)は、他の男性(競合他社)とは、異なるバリューカーブを提示し、女性(顧客)獲得をするのが、進むべき道(企業戦略)となります。 僕の理解が正しければ、以上がブルーオーシャンストラテジーです。
追伸
授業で扱ったケースでは、任天堂のウィーが非常に理解しやすいかと。従来のコンピューターゲームは、対象が子供、少人数で遊ぶ、ボタンを押すだけ、遊び方が複雑、などがバリューカーブであったが、ウィーは、対象は子供も大人もOK、大人数でも盛り上がれる、実際に動く、単純など、バリューカーブの形は全く異なる。異なるバリューカーブを提供するビジネス・製品が必ずしも成功するとは限らないが、企業が新しいビジネスを考える上で進むべき一つの方向であるのは間違いなさそうである。 余談であるが、ウィーのケースを扱っていたときに、今や懐かしいファミリートレーナーについて質問をしてみた。ほとんどの学生はファミリートレーナーの存在を知らなかったが、まったく異なるバリューカーブを提示するコンピューターゲームだったのになぜ成功しなかったのだろうということを質問してみた。あまり納得のいく回答を得られなかったのであるが、市場が熟しておらず、デマンドがなかったからとのこと。異なるバリューカーブを提供しても、そこに顧客の需要がないといけないわけで、あまりにエキセントリックになってしまうと、誰にも相手にされなくなってしまうということなのでしょう。
以下で教授が説明をしております。
http://www.randomhouse-kodansha.co.jp/blueocean/top.html
by Insead_2009
| 2009-01-04 00:03